受精卵の全能性を支える核、即ち「全能性核」は、初期発生の特定の時期のみ存在します。全能性核がどのように作り上げられ、その機能を発揮するかは、全能性獲得の本質を理解する上で極めて重要です。そこで本研究では、マウス受精卵における全能性核の構築過程を精査し、他の分化した核と異なる性質を明らかにします。特に、核骨格の構成因子に着目し、全能性核が有する脱凝縮したクロマチン構造の形成機構解明を目指します。
また、全能性核特有の分子的、生物物理学的特性を統合的に評価し、最終的には全能性核の再構築を試みます。
近畿大学 生物理工学部 遺伝子工学科
准教授
Kindai University
Associate Professor
http://research.kindai.ac.jp/profile/ja.94ee71cc546e36ec.html
2004年、京都大学農学部卒業。
2009年 京都大学農学研究科博士後期課程 修了 博士(農学)。
同年、英国ケンブリッジ大学ガードン研究所ガードン研究室 博士研究員。日本学術振興会海外特別研究員を経て、2012年よりハーチェルスミスリサーチフェロー、及びケンブリッジ大学ウォルソンカレッジフェロー。
2015年4月より近畿大学生物理工学部 常勤講師。
本課題では、全能性核が有する力学特性の計測と操作を通してその設計原理を明らかにすることを目指す。宮本圭研究代表と協力して、マウスをモデルに初期胚核の硬さや粘弾性を顕微針操作等の物性解析手法を使って直接計測し、構成因子の量的・生化学的変化が核の力学特性に及ぼす効果とその生理的意義に生物物理的視点からアプローチする。
国立遺伝学研究所 新分野創造センター 定量メカノバイオロジー研究室
准教授
National Institute of Genetics
Associate Professor
2007年早稲田大学大学院理工学研究科にて学位(理学)を取得後、ロックフェラー大学化学細胞生物学研究所で細胞分裂装置の力学特性に関する研究に従事。この間上原記念生命科学財団フェロー、日本学術振興会海外特別研究員。
2012年よりさきがけ研究者として同大学で細胞分裂装置の再構成実験に着手。
2014年に国立遺伝学研究所新分野創造センター准教授(テニュアトラック)に着任し、2019年より現職。細胞が分裂期や間期に力学情報をいかに伝達、処理しながら機能しているかを物理と細胞生物学の手法を使って研究している。