研究内容 Researches

公募研究班 A01 (R04-R05)

代謝調節を基盤とした全能期胚エピゲノムの制御とその継続性の解明 

初期胚発生過程で機能する代謝系を包括的に特定し、エピゲノムおよび初期胚発生の制御における役割を解析します。初期胚で変化が見られたエピゲノムに関して、生殖細胞系列への分化後も維持され、生殖細胞や次世代個体に影響を与えるかを検証し、代謝―エピゲノムクロストークによる初期胚発生制御機構とその長期的な影響の解明に挑みます。本研究を基に妊娠母体の栄養環境や、胚培養時の培養環境を改善することで、次世代の健康や生殖細胞の質を高める研究につながることを期待しています。

代表者 / Project Leader

林 陽平
Yohei Hayashi

東北大学加齢医学研究所
助教
Tohoku University
Assistant Professor

http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/crcbr/

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愛知県出身、東京・宮城と東に動いています。代謝・エピゲノム・生殖細胞研究が専門ですが、この度縁あって受精卵・初期胚発生の領域に入れていただきました。他の専門分野からの視点を活かしつつ、全能性研究との融合により新たな展開を目指して楽しんで取り組みます。

マウス卵割期胚発生におけるゲノム倍数性、細胞の大きさ、両者のバランスの重要性

ゲノム倍数性の変化が胚発生に与える影響は生物種によって異なる。脊椎動物の中でも魚類、両生類は人為的に三倍体の成体を作り出せるが、鳥類や哺乳類の三倍体胚は生まれない。また、特に哺乳類の一倍体胚は6-7回分裂する間に多くが発生停止してしまうが、その理由はわかっていない。本研究では、「ゲノム倍数性」「細胞の大きさ」「両者のバランス」の変化がそれぞれどのような発生異常を引き起こすか、その原因は何かを明らかにすることで、全能性の獲得・発揮には何が重要なのかを解くための知見を得ることを目指す。

代表者 / Project Leader

大杉 美穂
Miho Ohsugi

東京大学総合文化研究科広域科学専攻
教授
Tokyo University
Professor

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/ohsugilab2013/index.html

マウスの受精・卵割過程を細胞生物学的に観る研究の面白さにハマって14年経ちました。受精卵の卵割と体細胞の分裂の違い、哺乳類とそれ以外の脊椎動物の卵割期の違いに興味をもっています。

全能性消失時における新規エンハンサー作用機序の統合的理解

初期胚発生では、母性因子に依存した遺伝子発現プログラムから、胚性ゲノムによって駆動される遺伝子発現プログラムへの移行という大規模な生命機能の転換を経る。本研究ではこれまで見過ごされてきた全能性消失時の背景に潜むゲノム構造の動的変化に着目し、初期胚発生時の胚性ゲノム活性化に果たす機能を包括的に理解することを目指す。

代表者 / Project Leader

深谷 雄志
Takashi Fuyaka

東京大学先端定量生命科学研究所
准教授
Tokyo University, Institute for Quantitative Biosciences
Associate Professor

https://sites.google.com/view/fukayalab/home?authuser=0

北海道上川郡生まれ。趣味はベランダ園芸。自分にしかできないサイエンスをストイックに追求したい。

植物初期胚発生におけるリガンド-受容体を介した胚性再獲得機構の解明

植物は茎や葉を切断しても、その切断面から新しく根や茎を伸ばし、新たな個体を再生できる。植物が持つ高い再生能力を活かし、挿し木など古くから園芸・農業に利用されてきた。植物細胞は分化した後も全能性を発揮でき、それにより高い再生能力をもつことが知られている。そのため、全能性を発揮するメカニズムが盛んに研究されてきたが、ほとんどは体細胞のリプログラミングに着目した研究であった。しかし、体細胞のリプログラミング過程で生じるカルスや不定胚の多くは、細胞塊の状態でしか解析できず、1細胞レベルで全能性に関わる遺伝子発現変化を捉えることは困難であった。近年、我々はシロイヌナズナにおいて、受精卵の分裂過程(受精胚発生)をin vitroで詳細に観察・解析できる系を確立し、フェムト秒パルスレーザーで胚始原細胞である頂端細胞(胚体細胞)を破壊したときに、隣接していた胚体外細胞である胚柄細胞が細胞運命転換をおこして、再び胚を形成する驚くべき再生能力を明らかにした。  本課題の目的は、我々が確立したシロイヌナズナin vitro胚発生系を利用し、植物受精胚の「全能性プログラム」制御に関わる因子を明らかにすることである。本課題では、ペプチドホルモンに着目して、リガンド-受容体シグナル経路を介して胚体外細胞が胚性再獲得する分子機構の解明を目指して研究を行う。また、計画研究班の哺乳動物研究との連携により、生命の根幹をなす仕組みに潜む普遍的なメカニズムの発見を目指す。

代表者 / Project Leader

栗原 大輔
Daisuke Kurihara

名古屋大学
特任准教授
Nagoya University
Associate Professor

https://kuri289.wixsite.com/kurihara-plant-group

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植物内部で起こっている現象を詳細に解析するために、顕微鏡下においてin vitroで生命現象を再現し、細胞や遺伝子発現を光操作することで、生命現象を担っているメカニズムを明らかにすべく、ライブイメージング技術・光操作技術の基盤を構築することをおこなっている。近年は植物の透明化技術も開発し、深部イメージングもおこなっているので、多くの人に植物の美しさを見ていただきたい。

霊長類の内部細胞塊ダイナミズムと全能性

霊長類の胎盤組織は、げっ歯類と同様胚盤胞の栄養外胚葉から発生する一方、胎児組織は内部細胞塊から発生することが推測されている。しかし、これまで実験的検証がされてきませんでした。本課題では、1.霊長類の胎盤の起源を、ライブイメージングおよび細胞標識実験によって検証する、2.霊長類の内部細胞塊ダイナミズムを制御する分子基盤を解明する、という2つの研究項目を遂行することで、霊長類初期胚における全能性細胞の起源と細胞動態を解明することを目標としています。

代表者 / Project Leader

依馬 正次
Masatsugu Ema

滋賀医科大学動物生命科学研究センター、幹細胞・ヒト疾患モデル研究分野
教授
Shiga University of Medical Science
Professor

http://www.shiga-med.ac.jp/~hqmonkey/

これまで30年近くマウスを用いて発生研究を行ってきました。9年前に現職に着任後、非ヒト霊長類の研究に参入しましたが、げっ歯類で見出された発生原理がそのまま霊長類に当てはまらないところもあるのではないかと考え、研究をしております。

全能性関連遺伝子の発現におけるエピゲノムと転写因子の貢献度の解明

ヒストンH3K9のメチル化修飾は、構成的ヘテロクロマチンを代表するエピジェネティックマークです。私たちはこれまでに、マウスES細胞を使った実験により、2細胞期特異的遺伝子がH3K9メチル化酵素群によって“三重にロック”されていることを見いだしています。本研究課題では、2細胞期特異的遺伝子の抑制におけるH3K9メチル化の役割を明らかにするとともに、なぜ2細胞期特異的遺伝子を抑制する必要があるのか、その意義も明らかにしたいと考えています。

代表者 / Project Leader

立花 誠
Makoto Tachibana

大阪大学大学院生命機能研究科
教授
Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University
Professor

https://tachibana-lab.net/

大谷翔平や佐々木朗希で最近注目されている岩手の出身です。岩手、東京、神奈川、京都、徳島と、西に西にと渡り歩いてきましたが、3年ほど前に少し東に戻って大阪に来ました。釣りが好きで、淡路島や鳴門に良く出かけています。

卵賦活化が引き起こす母性mRNA翻訳調節による全能性獲得機構の解明

受精などの刺激により、卵は活性化 (賦活化) され、全能性を獲得し発生を開始します。この全能性獲得のためには、卵内の遺伝子発現パターンが、それまでの卵母細胞として高度に分化した状態から、未分化の状態へと大きく変化しなければなりません。しかし、卵賦活化の時期に、多くの生物では転写が不活性であることが知られています。そのため、卵賦活化による遺伝子発現パターンの変化には、母性mRNAの翻訳調節が大きな役割を果たします。そこで、本研究では、ショウジョウバエ卵をもちいて、卵賦活化シグナルの下流でどのように母性mRNA翻訳が調節されているかを明らかにします。それにより、全能性獲得プログラムの分子機構の理解を目指します。

代表者 / Project Leader

原 昌稔
Masatoshi Hara

大阪大学 大学院生命機能研究科 染色体生物学研究室
助教
Osaka University
Assistant Professor

受精による卵活性化は、受精卵の全能性獲得や、遺伝情報を次世代に繋ぐための染色体分配・細胞分裂の開始など、様々なイベントを引き起こします。これらの現象を、これまでにヒトデ卵、ショウジョウバエ卵、脊椎動物培養細胞などを用いて研究してきました。全能性の研究分野のさらなる活性化に貢献できるよう頑張りたいです。

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マウス母体内における2細胞期胚の割球間競合の抑制機構と意義の解明

これまでマウス2細胞期胚の割球は等価であり、ともに全能性をもつと考えられてきました。しかし近年発展著しい1細胞RNAシーケンスなどの解析により、この2割球は必ずしも等価ではない可能性が示唆されています。私はこれまでの研究から、2細胞期の割球は環境依存的に競合しあうことを新たに見出しました。本研究課題では、そのメカニズムと生理的意義を解明することを目指します。

代表者 / Project Leader

橋本 昌和
Masakazu Hashimoto

大阪大学 生命機能研究科 生命機能専攻
准教授
Osaka University
Associate Professor

高校生の時、生物図説に載っていたカエルの卵割や原腸陥入を見て、将来発生学の研究をやると決めました。東工大の卒研配属でゲノムインプリンティングの面白さに衝撃をうけて以降、(鉄道会社に就職した2年間を除き)阪大・基生研などで一貫して哺乳類の個体発生に関する研究を行ってきました。最近はゲノム編集とモザイク胚を組み合わせて新しい生命現象の発見に挑戦しています。

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受精卵が全能性を維持するために染色体分配異常から回復するメカニズムの解明

全能性を持つ受精卵は,卵子と精子が接合(受精)することで生じる初期発生におけるスタートの細胞である。しかしながら,卵子は減数分裂過程で染色体分配異常を起こしやすく染色体数異常を持った卵子が多いことはよく知られており,これは,受精後の全能性獲得において大きなリスクである。そこで,受精卵が減数分裂過程で発生した染色体分配異常から回復する何らかのメカニズムがあるのではないかと仮説をたてました。本研究では,そのメカニズムの証明と解明を目指します。

代表者 / Project Leader

京極 博久
Hirohisa Kyogoku

神戸大学大学院 農学研究科 生殖生物学研究室
助教
Kobe University
Assistant Professor

http://www.ans.kobe-u.ac.jp/kenkyuuka/sigen/seishoku.html

大学4回生で研究室に配属されたから、道具はマイクロマニピュレーター、材料は卵母細胞と初期胚で研究を継続しております。ユニークで泥臭い研究が好きです。色んな技術で領域に貢献できるよう頑張ります。

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初期胚の全能性獲得と消失で起こるエンハンサー・プロモーター相互作用のダイナミクス

複雑な細胞機能を司る遺伝子制御機構の理解には、その核内ゲノム3次元構造を解き明かす必要があります。しかし生命が形作られる初期胚発生において、エンハンサー・プロモーター相互作用をはじめとするゲノム3次元構造がいかに変化し、その遺伝子制御システムが成立しているのか、その詳細は不明です。本研究では、受精卵が全能性を獲得し、その後、細胞分化と共に全能性を消失する過程のエンハンサー・プロモーター相互作用のダイナミクスを詳細に解析し、ゲノム非コード領域の初期胚発生における機能的役割の解明を目指します。

代表者 / Project Leader

久保 直樹
Naoki Kubo

九州大学
助教
kyushu University
Assistant Professor

https://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/labo/epigenome/index.html

もともと呼吸器疾患、悪性腫瘍等を中心に臨床の仕事をしておりましたが、博士課程で生殖細胞のエピゲノム解析に携わって以来、様々なエピゲノム制御の仕組みに魅せられ研究を続けております。この領域ではゲノム3次元構造解析から初期胚発生の転写制御の仕組みに迫り、全能性研究の発展に貢献できるよう頑張ります。

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空間マルチオミクスでアプローチする初期胚における細胞運命決定機序の理解

マウス着床前胚では、早期より個々の細胞のトランスクリプトーム、即ち個性が形成される。その一方で、各々が全能性も有しており、結果、可塑的な状態で存在している。この可塑的な状態はクロマチン構造により規定され、胚盤胞における細胞間相互作用や種々のシグナル伝達経路の活性化に伴い、特定の分化方向に運命づけられるが、その機序は未だ不明な点が多い。そこで本研究では、1細胞期から、ICM形成に至る過程で胚内部における細胞間相互作用および個々の細胞内で生じるシグナルの活性化を網羅的に解析すると同時に個々の細胞のクロマチン構造をゲノムワイドに解析を行うことで包括的な解明を目指す。

代表者 / Project Leader

大川 恭行
Naoki Kubo

九州大学
教授
kyushu University
Professor

https://tx.bioreg.kyushu-u.ac.jp/

クロマチン構造を専門とし、オミクス技術の開発にも力を入れてきました。既存、独自技術のいずれにもこだわらず、最も効率の良い研究をすすめるための方策を常に模索しています。本領域において、多くの方々との共同研究を構築することで、オリジナリティをより強く、課題解決をより迅速に進めていければと考えています。

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全能性獲得過程におけるタンパク質分解へのN末端則経路とアルギニル化のかかわり

N末端則とはタンパク質の半減期がそのN末端のアミノ酸によって決定されるという法則である。N末端則経路における重要な翻訳後修飾がアルギニル化であり、N末端則経路およびアルギニル化は多くの生物で保存されている重要なメカニズムであるが、初期発生における研究は進んでおらず、これらと全能性獲得の関係については全くわかっていない。本研究では、N末端則経路を介した母性タンパク質の分解と全能性獲得のかかわりを明らかにすることを目指す。

代表者 / Project Leader

黒坂 哲
Satoshi Kurosaka

近畿大学先端技術総合研究所
講師
Kindai University
Lecturer

大阪府南部の泉佐野市出身で、学生、ポスドクとして国内外を転々としたのち、実家から車で30分の職場に地元就職しました。学生時代に核移植クローンを学び、その後いろいろな研究に手を出しましたが、全能性研究に戻ってきました。これを「初期化」というのでしょうか。全能性を獲得できたかどうかはわかりません。

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DUX非依存的な新規2細胞様細胞の可視化による胚性ゲノム活性化機構の解明

ES細胞の培養過程において、2細胞期胚特異的に発現するレトロトランスポゾンMERVL陽性細胞(2細胞様細胞)が出現することが報告されています。この2細胞様細胞の出現は、転写因子DUXに依存していますが、in vivoでDuxをKOしても胚発生が正常に進行することから、in vivoではDUX非依存的な経路が全能性を制御していることが示されています。本研究提案では、(1) DUX非依存的な新規2細胞様細胞の可視化、(2)新規2細胞様細胞の可視化系を用いたDUX非依存的な胚性ゲノム活性化機構の解明、この2つ研究課題を進め、最終的には全能性幹細胞の樹立を目指します。

代表者 / Project Leader

関 由行
Yoshiyuki Seki

関西学院大学 理工学部
教授
Kwansei Gukin University
Professor

https://seki-lab.wixsite.com/seki-lab

鹿児島県奄美大島生まれ。昔はバスケットボールが趣味でしたが怪我が続き引退。今は子育てに明け暮れる毎日です。博士課程の時に全能性獲得機構の解明を目指し、始原生殖細胞のエピゲノム解析をスタートしました。「誰もやらないけど、面白い研究」を目指します。

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