研究内容 Researches

計画研究班 A01-1

受精卵全能性を統御する遺伝子群の単離と機能解析

本課題では、受精時のゲノム再プログラム化を担保する機構を、①生命起動メカニズムの解明、②卵活性化機構の解明、③精子エピゲノム獲得機構の解明、の3つの課題に分けて進め、受精卵全能性を統御する遺伝子群の単離と機能解析を目指す。また総括班と連携し、CRISPR/Cas9ゲノム編集等による遺伝子改変マウスの作製支援を行う。

代表者 / Project Leader

伊川 正人
Masahito Ikawa

大阪大学 微生物病研究所 附属感染動物実験施設
教授
Osaka University
Professor

https://egr.biken.osaka-u.ac.jp/

趣味にスキー・スクーバダイビングと書いたのも遥か昔。今はメタボを気にしつつ出張ついでの外食が密かな愉しみ。最近、柔道経験者ということだけで、阪大柔道部の責任者になる羽目に。押印と応援だけですが、やはり血が騒ぎます。肝心の研究ですが、遺伝子改変マウス一筋30年!特技を生かして生殖の不思議を解明したいと奮闘中です。

分担者 / Co-Project Leader

篠原 隆司
Takashi Shinohara

京都大学 医学研究科 遺伝医学講座・分子遺伝学分野
教授
Kyoto University
Professor

http://www2.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/~molgen/index.html

生殖細胞は次世代への遺伝子伝達を行う唯一の細胞です。私は医学部生の時に病理学で奇形腫について勉強して生殖細胞に興味を持ちました。大学院へ進学後、ちょうど日本に導入されたばかりの遺伝子ノックアウトマウス作成技術を通じてES細胞を知り、さらに生殖細胞への興味は深まりました。当時は遺伝子の総数がどのくらいあるかも知られておらず、ES細胞を用いたノックアウトマウスによる遺伝子機能解析が主流になるのは明らかでした。しかしながら、その一方でES細胞を用いた遺伝子改変動物の作成はマウス以外の動物では困難であり、自分はここに興味を持ちました。その中で大学院2年生のときにペンシルバニア大学のRalph Brinster博士が精子幹細胞の移植技術を発表されたのを見て生殖細胞への興味が更に深まりました。精子幹細胞は子孫へ遺伝情報を伝えるという点でES細胞に匹敵する唯一の細胞であり、この技術のもつ可能性は未知数でした。大学院修了後、私はそれまでやっていた免疫学の研究を離れて、Brinster博士のもとで精子幹細胞の研究を始めました。3年半の留学の間に精子幹細胞の純化法の開発や妊孕性の向上技術を開発しました。帰国後、精子幹細胞を用いた発生工学技術を実現するためにはこの細胞をES細胞のように増殖させる培養技術を確立する必要があると考え、2003年に精子幹細胞の培養に成功し、樹立された細胞をGermline Stem (GS) 細胞と名付けました。GS細胞は2年間以上の長期間にわたって培養しても正常な子孫を作成する能力をもつのみならず、ES細胞と同等の多能性をもつ(multipotent germline stem, mGS細胞)にも変化します。私たちはGS細胞を用いてノックアウトマウスを作成し、現在この技術はマウスとラットへと展開されてきました。現在、GS細胞を非げっ歯類から樹立することと、試験管内精子形成の確立を目標として研究しています。私の夢はGS細胞を酵母のように扱うことです。