本領域では、解析系のA01「全能性プログラムの解読(デコード)」と応用系のA02「全能性の制御と構築(デザイン)」の2研究項目を設定した。さらに時間軸に沿って「①全能性獲得」「②全能性の発揮」「③全能性消失」の3つのステージ分けを行なった。これら項目内および項目間の連携を強化し、各班員の総合力を結集させることにより、「全能性プログラム」の包括的な理解、そして将来の応用展開の基盤を構築する。
それぞれの項目における具体的な研究内容は以下の通りである。
「①全能性獲得」においては、CRISPRノックアウトスクリーニングによって全能性獲得に関わる卵子(母性)因子を同定し、さらに核内物理的特性解析を行なうことで、全能性獲得核(前核)に特異的な形成メカニズムを解明する。「②全能性の発揮」においては、発生イベント依存的および転移因子依存的な胚性遺伝子発現メカニズムを解明し、いかに全能性が発揮されるかを明らかにする。「③全能性の消失」においては、胚と胚体外への初期分化過程におけるエピゲノム動態を解明し、エピゲノム操作による全能性構築の技術基盤を作る。
A01で解読する全能性プログラムを各ステージに対応させて制御技術を確立する。「①全能性獲得」においては、カエル卵子抽出液を用いてin vitroでゲノム再プログラム化を再現することで、全能性獲得因子とメカニズムを明らかにする。「②全能性の発揮」においては、エピゲノム再編成因子を同定し、全能性細胞(核)の構築をめざす。「③全能性の消失」においては、独自に確立した幹細胞培養技術を活用し、全能性を喪失した幹細胞から人工胚盤胞の構築を経て、胚体外を含めた完全な個体形成を目指す。さらに、体細胞核移植の新規技術開発により、全能性胚から胎盤までの全期間の完全な再構築を目指す。